2015年1月6日火曜日

イノベーション経営のためのデザイン思考

2014 年 3 月に行われた経産省主催の「イノベーション経営のためのデザイン思考 〜企業事例に学ぶ新たな価値の生み出し方〜」というセミナーでの夏野剛さんの講演のメモ。

「サービス開発の秘訣」    
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特別招聘教授    
株式会社ドワンゴ 取締役 夏野剛    

デザインは意匠だけでなくビジネスモデル、サービスの設計、ものの価値を全て決める。
21世紀、ITが出てきてから全ての環境を激変させた。
技術がない企業でも、外から調達してきていくらでも製品を作れる時代になった。
例えば、Appleは工場を持っていない。サービスのデザイン、意匠のデザイン、ソフトウェアのデザインをやっているだけである。            

3つのIT革命    

1. 効率革命    
全ての業態の仕事の仕方を変えた。    
例えば、国内線の航空券の JAL、ANAの売り上げの75%はネットである。    

2. 検索革命    
個人の情報収集能力が飛躍的に拡大した。日本の組織の力を大きくするという仕組みが通用しなくなって20年。

個人がいくらでも専門家になれる。
逆に言えば、何か一つのサービスや組織を作ろうとしたとき、その道の専門家を揃えなければ作ることができないという時代が変わり、そのようなものはいくらでも調達できるようになった。
むしろ、リーダーがどのような方向に持っていきたいかということが最も重要になる。
21世紀になり全ての技術や専門知識がコモディティ化した。
個人と組織のパワーバランスが変わったということを組織デザインに反映させなければいけない。     

3. ソーシャル革命

古来の日本の経営学者は「いかに効率的な組織を作るかが企業の競争力である」と言っていた。    
みんなと同じことをやっていればGDPの成長率と同じだけ成長できる世界は、高度経済成長のときだけである。

イノベーションは今までにないことをやるのに、組織のデザインがそのままでできるわけがない。    
個人の気づきをいかに共有するかが重要になる。

例えば、ニュートンはリンゴが落ちるのを見たときに組織力でもなんでもなく個人として「重力」に気づいた。
人類の文明は、個人の気づきを共有し、蓄積し、時代を超えて伝承することで進化してきた。    
イノベーションは個人ベースである。    
例えば、任天堂の Wii-Fit は宮本さんが自分のダイエットのためにほしいと思ったが、 周りの幹部は誰もうまくいくと思っていなかった。    

みんなが良いと思ったものはその時点でイノベーションではない。
みんなの輪の中でイノベーションを起こそうという日本企業のアプローチは間違えている。
個人と組織の力のバランスを見直すとき、個人がインターネットによって強化される。
日本は人口が減少してくるため、イノベーションなくしては国が成り立たないところにきている。 日本の人口は、2030年までに1000万人減少する(九州が一つなくなるくらいの計算)。
このような国にいる限り、付加価値を出すことでしか成長は見込めない。    


サービス開発の秘訣    
・ヒントは身近にある素朴な疑問

人の意見に合わせて作るものに感動は生まれない。マーケティングをすればする程、良いネタが削られ、感動を与えられなくなり、誰でもできるような製品になってしまい、イノベーションは起きない。    

・自社の技術、制度や社風などの制約を外して考える

自分が置かれている環境の限界を考えてしまうと、その環境の中でしか作ることができないものしか作れなくなってしまい、感動は生まれない。    

・社内のコンフリクトに対して主張する時の3条件    
1. 自分が主観的に正しいと確信できる    
2. 客観的に理屈として考えても正しい    
3. 会社や社会のためにもなる
    


最後に    
デジタルの時代だからこそ、個人の信念や魂をどれだけ込められるかが価値になる。
日本は誰がやっても同じ製品が生まれる組織が大事にされてきたが、それでは感動は生まれない。    
iPhone はスティーブ・ジョブズに合わせて作っただけであるが、多くの人に感動を与えている。しかし、嫌いな人がいてもいい。

万人に受ける必要はない。
イノベーションを起こすことによってのみ、これからの日本は生き残ることができる。